NAS。
今となっては「データの保存庫」として使っている人も多いだろう。
テラバイト級のデータ保存領域としてはまだまだSSDは高く、HDDは1TBでも随分と安くなった。
今回この記事を執筆するに至ったのは、このNASを用いたデータの活用法が思いの外良かったのでシェアしたいと思ったのがきっかけだ。
詳しい人には当たり前の話で恐縮です。
大まかな概要としては
拠点Aと拠点B(それ以上含む)間でデータの双方向同期をしたい
という事。
僕は事務所と自宅で仕事をしているフリーランス。
主に制作系のため データは膨大となり、かつリアルタイムな同期をしたかった。
だからといってGoogle Driveなどのファイルストレージは月額がかかるしテラバイト級を契約するのは経済的に困難。
今まではGoogle Driveに必要なファイルだけをアップロードし、家でそれを編集していたりした。
そこで利用したのがSynologyのNASだ。
個人に手の届く範囲のNASはSynologyかQNAPが有名。
Synologyは使用経験もあったので迷わずこちらを選択した。
結果から言うと 僕の望むようになっている。
ファイルを更新すればリアルタイムで拠点間のNASのデータは更新され、事務所で作業していても自宅で作業していてもストレスなく制作に打ち込めている。
難点を挙げるとすれば、ファイルの読み書きの遅さ。
そこまでストレスのかかる時間ではないが、やはりインターナルのHDDに比べ遅い。
対処策もあるにはあるが、やはりそれにはお金がかかってしまう。
Synologyの中でもこのくらいのデータ量だと何を買えばいいのかどうか
設定方法や運用方法など数多い失敗と、だからこそ解った事柄などを紹介する。
長文となっているので、目次を参照してください。
IO DATA LANDISK HDL2-AAシリーズ で失敗した
SynologyのDiskStationを導入する前、僕はIO DATAのNAS HDL2-AA6を使用していた。
RAIDを組み3TBでの運用だ。
業務にはなんら問題なかったのだが、事ある毎に使いにくさを感じていた。
なぜか。
それは外出先でもNASのデータを参照できる「Remote Link」にある。
事務所のワークステーションで作業していて、自宅で続きをしたかった時のことだ。
RemoteLinkはスマホのアプリを使えば非常に使いやすいものだ。
今どきのUIで動作も悪くない。
しかし、PCやMacでデータをやり取りする場合、専用のソフトが必要になる。
何故かJAVAを使うような設計で、僕のSurfaceProやMacBook Proではディスプレイの解像度が高いためUIが大変に小さくなった。
文字が判読し難い程に。
加えファイルのやり取りも面倒で、非常に使い勝手が悪く萎えてしまったのだ。
おまけにブラウザからもファイルにアクセスできない。
レプリケーションという機能を使えばLanDisk同士でもファイルの双方向同期が取れるのだが、すっかり意気消沈となってしまい 買い替えをする事になった。
ちなみに今このLanDiskは家庭用のNASになり業務とは関係ない家族用のデータ保管庫となっている。
TimeMachineの使用容量制限が簡単には出来ない所以外満足している。
DiskStation DS218j とDS119j で失敗した
買うべきモデルを選び間違えたのだ。
結論から言えば、ファイル数が多すぎたために同期の処理がハングアップしてしまった事にある。
NASにはCPUとメモリが搭載された言わば小さなパソコン。
この性能がNASを運用するにあたって非常に重要になる。
これは後から知ったのだが、ファイルを双方向同期するにはそれなりのCPUとメモリが必要なのだ。
サポートのお世話になり、各機種には扱うファイル数の目安が載っている。
例えば218+ならこちらのページを参照。
Cloud Station Server項目の「ホストされているファイルファイル (btrfs・ext4) の最大数」は1,000,000ファイル
Synology Drive項目の「ホストされるファイルの推奨数」は500,000ファイルだ。
当時僕のファイル数は約200,000。
ハングアップの原因となったDS119jは何と10,000ファイル。DS218jは100,000。
主にDS119jで動かなくなっていたのもよく分かる。
推奨の20倍もの圧力がかかれば そりゃ~ハングアップするわなと思った。
まさかCPUとメモリ不足で同期が出来なくなるとは思いもしなかった。
NASに関して無知だったけど、また一つ勉強になった事案だった。
ちなみにこのファイル数推奨値は機種の価格に比例している訳でもあまりなく、基本的には搭載CPUによって異なっている。
8ベイモデルだからと言ってもファイル数は同じ500,000。
違いが出てくるのはブレード型の8コアモデルくらいになれば3,000,000ファイルとかになってくる。
個人でブレード型のようなNASを買う人もあまりいないだろう。
DiskStation DS218+を2基導入で満足のいくものとなった
結局落ち着いた所は DS218+を2基。
この事があって改めて『DS218+』にしたのは以下の理由から。
- DS218+は扱えるCloud Station Serverファイル数が1,000,000。
- DS218Playは100,000。
- 1ベイモデルではこの基準に満たない。
- 将来的にメモリの拡張可能、eSATAポートでHDDの増設ができる
- 同じ2ベイモデルのDS718+はイーサポートが2つあるのでリンクアグリゲーション対応。でも予定なし。
導入したDS218+は価格面でもスペック的にも非常にバランスが取れた製品だった。
1ベイモデルから2ベイモデルへ移行する時の注意点
DS119jは1ベイモデルで、使用していたHDDはそのまま移行。
218+は2ベイモデルだが、HDDは1つでも問題なく機能する。
しかしここで1つ問題が。
1ベイモデルから2ベイモデルへと移行する際、HDDはフォーマットしなくてはならない。
つまり記録していたデータは抹消され新しくセットアップが要求される。
これは構成の違いによるものだそう。
将来的に1ベイモデルから2ベイモデルへとアップグレードする可能性があるのなら最初から2ベイモデルを選ぼう。
2ベイモデル→2ベイモデル以上では一部制約があるが 何ら問題なくスムーズに移行できる。
DS218+とDS119j
移行した際に両モデルが手元にあったので比べてみた。

DS119j

DS218+HDDアクセス時

DS218+ベイを外したところ

DS218+のベイはビスは要らない

DS218+にHDDをセット

両者の背面
DS218+くらいのモデルになると仕上げが変わってくる。
より高級感のある仕上げになり、HDDのアクセスも前面部分からガバッとベイを取る事が出来て
かつHDDを止めるビスも要らない(3.5インチ)のでセットアップもしやすい。
DS119jはケースをスライドさせて内部にアクセスし、HDDを止めるビスも必要だ。
また前述もしたが、eSATAポートも備えているので、将来的なHDDドライブの増設も可能だ。
電源はDS119jは簡易なアダプタなのに対し、DS218+はアースが付いてより業務用になっている。
DiskStation同士を双方向同期してみる
上記の諸問題から双方向同期をするには非常に時間がかかった。
まずは各NASをセットアップする。
分かりやすく親と子という概念で設定していく。
同じシノロジーアカウントでログインし、QuickConnectを設定する。
このQuickConnectは親は必ず設定しよう。
後述するが、親のNAS(ターゲット)に対し 子を接続する事になる。
サーバ名は別々でも同じでも構わない。
僕の場合はファイルのパスが変わるとややこしいので、同じサーバ名にして、どのPCで開いても同じファイルパスとなるようにする必要があった。
分かりにくかったCloud Station (現 Synology Drive)
ハマってしまったのがこのCloud Stationだ。
調べてみると、どうもCloud Station Serverを使いデータを同期させるそうだ。
しかし、あるページには「Drive」アプリがサービスの後継となっていると書いてある。
プリインストールされているのはDriveで、Cloud Station Serverと共存は出来ないようになっている。
このDriveでの同期の方がより多様なサービスに対応している。
サポートの話によると、やはりDriveで同期を図った方がいいとの事。
2020/3/13 追記
執筆現時点ではSynology Drive ShareSync となっている。
ちなみに前述した問題のDS119jはこの方法で同期したのにも関わらず、同期はするけどCloud Station ShareSyncが固まり、そして落ちてしまう。
同期は中断され最初から設定しなければ同期されない状態になっていた。
おまけに同期中はエクスプローラーからはNASにアクセスできずエクスプローラー自体が固まるという始末。
設定画面にブラウザからもアクセスできずにいた。
双方向同期 設定方法
まずはFile Stationから共有フォルダを作成しよう。
続いて親の設定項目は「Drive管理コンソール」から。(現 Synology Drive Admin Console)
チームフォルダから該当フォルダを「有効」に設定する。
これで親の設定は終了。
続いて子の設定。
Cloud Station ShareSyncを使う。(現 Synology Drive ShareSync )
接続する親のQuickConnect IDを入力し、ユーザーとパスを入力してログインする。
そして共有タブから先程のチームフォルダで有効にした項目が表示されるので対象をチェック。
ここで双方向同期を選択しよう。
この設定を終えると同期が始まる。
約20万ファイルの同期が終えるのには数日かかった。
初回は時間がかかるが、一度同期してしまえば後はほぼリアルタイムにファイルが同期される。
役立ちそうなTips、買えばまず大丈夫なモノを紹介
RAIDを組む
まずはNASには基本的にRAID(レイド)を組む事。
RAIDには種類があり、2ベイモデルならRAID1がおすすめだ。
僕の環境では3TBのHDD(WD Red)を2つ積んでいる。
ちなみにWDのRedはNAS用に作られたもので、NASのHDD=WDのRedというのはスタンダードとなっている。
完結に説明すると、それぞれのHDDに同じデータを書き込み、どちらか1つのHDDが故障しても該当HDDを入れ替えるだけで元通りになる。
RAID0は1+1+2+のような考え方で僕の環境だと6TBを運用出来るようになる。
その代わり1つでも故障すると全てのデータがオシャカとなる。
上記のように親と子で運用する場合、親はRAIDを組み、子はHDD1つだけでも大丈夫だろう。
SynologyのNASは2ベイモデルでもHDDは1つだけで動作する。
バックアップは必要?
RAIDを組むとなってもバックアップは必要だろうと思う。
あくまで「耐故障性」なだけであって復旧には時間を要する。
仕事で使う場合、時間があればいいのだが、早急な復旧は必須だろう。
SynologyのNASは専用のバックアップソフトが付いている。
Hyper Backupというアプリで、パッケージセンターからインストール可能。
僕はWindowsで色んなバックアップソフトを購入し試してきたが、このアプリが一番だと思うほどだ。
筐体にはUSBポートがついており、外付けのHDDを用いるといい。
一度設定してしまえば後は放ったらかしで大丈夫だ。
基本的には2.5インチだとバスパワーで動くし、3.5インチだとアダプタが必要となる。
外付けHDDは何でもいいと思う。
例えばこのHDDはオススメだ。
僕の環境では親のNASはバックアップを取り 子は何もしていない。
しかし1つ問題があり、それは最短のバックアップが1日単位となる事。
時間単位には対応しておらず、それは後述のSnapshot Replicationを利用するといい。
このスナップショットレプリケーションという機能。
何かというと、最短5分毎からスケジュールを組み、該当のフォルダを丸ごとバックアップしてくれる機能。
勿論スナップショットの数や上限を柔軟に設定できる。
この機能を使うには上位機種が対応しているので、こちらのページから対応しているか確認しよう。
HDDのフォーマット形式でも対応非対応が左右される。
Synologyが推奨しているフォーマット「btrfs」で使用する事ができ、「ext4」では非対応となる。
僕は親がext4でフォーマットしてしまっていたので使う事は出来ないのだが、子はbrtfsでフォーマットしたので利用出来る。
調べるとext4からbrtfsへ移行する事も出来るそうなのだが、山は少し大きいように見え 未だ実行できていない。