会社員の場合、名刺は元々デザインされており、何もせずとも自分の名前が入った名刺が支給される。
フリーランスの場合は、自分でデザインから肩書なども全てオリジナルで制作する事となる。
そのため自由度が高く、反面デザインの能力やセンスなんかも問われる事となる。
名刺と言うのは言わば「自分の顔」のようなもの。
たかが名刺されど名刺。
この記事ではそんな名刺の事を再考し、より良いものを作成出来るよう後押し出来れば幸いだ。
そもそも名刺とはなんだろう
社会人になると、最初のトレーニングの一貫として名刺交換の練習をしただろう。
特に日本では作法も慣習化されており、僕もそこについてとやこや言うつもりはない。
会社によっては、色々とマニュアル化されていたりもするが、フリーランスの立場であればそれも自由。
ただ、失礼のないよう奇をてらわずにごくごく一般的な名刺交換がこなせればそれで大丈夫。
名刺とは言わば「自己紹介カード」であり、そこには所属団体や氏名、連絡先などが記載されている。
デザインも多種多様で、紙質から大きさ形までオリジナリティ溢れたものが多い。
中にはギミックが仕込まれていたり、近年ではQRコードが記載されていたりもよく目にする。
名刺のサイズ、実は黄金比で作られている
黄金比とは「人が一番"美しい"と感じる事の出来る縦横の比率」のことだ。
日本では91ミリメートル×55ミリメートルがその比率を形成していて最も一般的なサイズである。
近似値ではあるが、「1:1.6」という比率である。
ちなみに似たようなものに「1:1.414」とう「白銀比」というのも存在する。
このように、名刺とは知らずしらずの内に美しい比率で構成されたものである。
名刺に記載すべき情報としては
- (あれば)社名・所属団体名・屋号、店舗名、ロゴ
- 肩書
- 氏名、呼称、ハンドルネーム等
- 連絡先(住所、電話番号、メールアドレス、SNSアカウント)
- ウェブサイトURL(QRコード)
が最低限あればいい。
あとは提供しているサービス、地図や写真などがある。
これらをいかにキレイに上手く見せられるかがデザインだ。
貰って嬉しい、見やすい、読みやすい かが重要。貰った人の気持ちを考えてみよう。
僕個人的な意見としては、「奇をてらいすぎない事」が最重要であると考えている。
そもそも名刺の役割というのは、「その人にアクセス出来る事」である。
そこで重要なのが、デザインに固執するあまり、名刺に書かれている情報がおざなりになってしまっている事。
例えば名刺のサイズがあまりに大きい、小さいこと。
規格に囚われず自由な形にしたいのも解る。
クライアントの目にとまり、目立つからだ。
デザイナー自身なら腕の見せ所でもあり、自身がデザイナーである事をより強調できる。そういう人は例外。
名刺を貰った人の行動を考えてみよう。
多くの人は専用の名刺ファイルやケースにしまう。
最近ではスキャニングしてオンラインで管理したりもしている。
例えば名刺ファイルは一般的なサイズを基に作られている。
そこで大きかったり小さかったり、形が特殊であった場合はファイルにうまい事入らない。
そうなると、いくらその人自身が良かったとしても、いくばかりかフラストレーションを感じさせてしまう事になるだろう。
ここでもう一つ言える事が、「名刺の情報は表と裏、どちらにどのくらい書くのか」という事。
多くの人が取る「名刺ファイルに入れる」という行動。
できればファイルから取り出さずに一目で最低限の情報を読み取れるものが望ましい。
僕の意見としては、記載されている重要な情報が表と裏(折りたたみ)でバラバラの場合はイヤなものだ。
例えば表は会社名のみ、裏は会社名を書かずに氏名などの情報のみ といったもの。
見た目はいいかもしれないが、名刺のデザインとしては破綻している。
デザインの本質としては、いかに上手く情報を伝えられるかが重要なのだ。
マスターベーションとなってしまっては、それは自分自身へのデザインであり、相手へのデザインではない。
紙質にこだわろう
良い印象づける最適な方法の一つとして、「紙質」が挙げられる。
受け取った時に手にしっくり来る紙は自然と印象が良くなる。
逆に言えば、家電量販店などで買える「印刷名刺キット」のようなものはNGだ。
これは手軽に安く出来る分、リスクも高い。
名刺の角に切り取った跡のミシン目があったり、カッターで切られたような歪な形であったり、
家庭用プリンターで印刷したような仕上がりはすぐにバレる。
そして思われる事は「ケチくさい人、しっかりと仕事を出来ない人」などといった悪印象を与えてしまう。
上で述べたように、「手にとってしっくり来る紙」は存在する。
僕は無難だが、「アラベール」という紙が好きだ。そして実際に使っている。
手に馴染むというか、手にとると やんわりと湿度を感じて触り心地が良い。
では膨大にある名刺の紙はどうやって知る事が出来るのか。
多くの名刺を印刷している会社はサンプル帳が存在し、取り寄せる事ができる。
その中で一番いい思える紙を選択しよう。
ただし、いい紙はもちろん値段も高い。印刷ロット数(印刷する量)でも価格は影響するので、今の自分に合った紙を使おう。
僕がよく利用するのは「印刷の通販グラフィック」
なんらかの印刷をする人は大体知っているくらいのサービスだ。
価格のコスパも良く、品質も良い。
ここは会員になるとサンプル帳が請求出来る。https://www.graphic.jp/sample
紙の厚さの重要性
紙質と並んで重要なものが「紙の厚さ」だ。
単位はkgで表記され、数値が大きい程厚くなる。
一般的な厚さは160~180kg。
当然のことながら、薄いと量を持ち運べ、厚いと名刺入れにあまり入らない。
繰り返すが、名刺とは自分の顔の代わり。
あまりにペラペラな紙だと、これも印象は良くならない。
今まで貰った名刺を参考に、自分が一番良いと思える厚みを知ってみよう。
薄い紙はその分安く、大量配布に向いている。
例えばレジ横に置くようなショップカードなどがそうである。
ただ大量配布とは言え、厚みがある分印象が良くなるので、かかる費用を考えて選択しよう。
僕のオススメは220kgくらいだ。
貰った名刺で印象深いのはやはり分厚い名刺。
それだけで存在感があり、こだわりも見せつけられる。360kgくらいになると持つだけで「おぉっ!」と思うものになってくる。
220kgはそこまで分厚くはないが、万人にしっくり来るサイズ感である。
クライアントによって渡す名刺を替える?
名刺をクライアントによって使い分けるという選択肢。
たまにあるのだが、僕は良くないと思っている。
どういう事かというと、お金になると思う人には上質な名刺を渡し、そうでなければ安価な名刺を渡す。
確かにいちいち全員に安くはない名刺を渡すのはコスト的にも負担がある。
営業に来た保険会社に渡すとか、本当に必要のない営業に来た人に渡す というのはアリかもしれない。
(僕はそもそも「名刺を切らしている」といって渡さないのだが)
ただし、どこで誰が見ているか、同じ業界であるならば尚更バレてしまう事も十分にある。
僕の体験なのだが、一緒に仕事をしている歳上のデザイナーが某フリーランスと名刺交換をした。
後に「何かの縁もあるかもしれないから」と僕にも紹介してくれ、名刺交換をした。
僕は完全に異業種であるので、まぁ一緒に仕事をする事はないのだが、その人は打合せをしていたデザイナーに渡した名刺とは違う安い名刺を渡してきた。
明らかにお金のかかった名刺を後で僕がみて、その人の印象はチーム内で最悪なものとなってしまった。
同じ事務所内でよく事を成したと思ったのだが、これは全く違った所であっても後々に判明する事がある話だと思う。
人生何があるかは分からない。
「こんな人を選ぶような人とは仕事をしたくない」と思われないように、慎重になるべきだ。
肝心のデザインはどうするのか
デザインが一番難しい。
ビジネスにおいては「受け取る人の為のデザイン」を心がけよう。
その人に贈る為のプレゼントくらいに思ってもいいかもしれない。
デザインに慣れている人や、Adobe製品を持っているならIllustratorで作るのが最もポピュラー。
今ではオンラインでテンプレートを選ぶだけでそれなりのデザインが起こせるサービスもある。
文字が小さすぎても駄目だ。
見た目はシュッとしてカッコいいが、もし相手が高齢の人で老眼なら?
大きすぎても野暮ったくなる。
同時に余白や文字間も重要。
フォントはもちろん印象付けの役割を果たしている。
そして文字の色も意外と重要。
文字は黒色!と決めていても、実際に純粋な黒は避けよう。
デザインでは真っ黒のブラックを使うことは稀だ。
文字を真っ黒にしてしまうと、墨のようになり、おもーーい印象になってしまう。
少しだけグレーに寄せるのが良い。それだけ同じ黒は黒でも印象の良い黒になる。
レイアウトできたら、かならずプリンターで印刷をしよう。
画面上だけでデザインすると、どうしても視野が狭くなる。
印刷して、手にとってみないと分からない事も多いのだ。
文字の大きさ、余白、視認性などを実寸で確認しよう。
少しのアクセントでメリハリをつけよう。
シンプルな名刺も良いが、少しパンチが弱い。
そんな時はアクセントを入れてみて、高級感やメリハリをつけてみよう。
例えば文字の大きさを変えてみる、色を変えてみる、ラインを入れる、帯を入れる。
少しの工夫でデザインに強弱が生まれ、抑揚が生まれる。
印刷のオプションになってしまうが、「エンボス・デボス加工」「箔押し」「穴あけ」「角丸」なんかがある。
エンボス加工は文字やロゴを立体的に浮かせ、箔押しは煌めいた金属のような加工が出来る。
ロゴや社名にこういったオプションを入れてみるのが一般的だ。
デザインなんて無理・・・
どうしても無理だと感じたなら、僕がオススメする方法が3つある。
オンラインでテンプレートを選ぶだけで作成できる「カスタムデザイン名刺【whoo】」
PC・スマートフォンから3ステップで注文でき、テンプレートから選ぶ事はもちろん、自分自身が作成したデータで印刷もできる。
名刺専門会社であり、品質も良い。
安さを求めるのであれば、広告でよく目にしたであろう「ラクスル」
名刺だけではなく、フライヤーやパンフレット、ポスターなども印刷できる。
各種テンプレートも用意されているので、使い勝手も良好だ。
最後に紹介するのが、「ココナラ」無料で会員登録ができる。
スキルを売買する専門の紹介サイトで、名刺をデザインしてもらうのだ。
プロがデザインしてくれて、データを貰い自分で印刷発注するか、デザイナーに全てを任せる事も出来る。
デザインは完全にオリジナルとなり、非常にオススメだ。
あとがき
奥が深い名刺。
これを軽く見ては先の仕事は難しいだろう。
クライアントには「しっかりとお金をかける所はかけているように見せる」=「目に見えるコストカットはしない」という事を心がけよう。
良い仕事はいつも自分の持ち物から。
最後までご覧頂きありがとうございました。